民泊用賃貸で物件オーナーの法的リスクは本当にある?──制度と契約で“安心して貸せる”仕組みを解説

民泊用賃貸で物件オーナーの法的リスクは本当にある?──制度と契約で“安心して貸せる”仕組みを解説

作成日: 2025年10月5日更新日: 2025年10月5日

はじめに

💡

ポイント

結論:「オーナーのリスクは想像よりずっと小さい」です。
届出・許可の取得や日々の苦情対応などの重い義務は 運営側(民泊事業者) に課され、オーナー(貸主)は通常の賃貸オーナーとしての範囲にとどまります。心配されがちな「違法営業」「近隣トラブル」「原状回復」も、 契約で役割と責任を切り分ければ十分にコントロール可能 です(本稿の法令・条例情報は 2025年1月時点 の公表資料に基づき、要所で一次情報リンクを記載します)。


1. 民泊オーナーの法的責任は本当にあるのか?

民泊新法(住宅宿泊事業法)の枠組み(2025年1月時点)

住宅宿泊事業法では、 届出や運営上の義務(年間180日上限を含む)の主体は“事業者側” であり、オーナーは運営者でない限り 直接の届出義務者ではありません (制度概要は観光庁「民泊制度ポータル」および関連省令等に整理されています)。

違法営業のリスク

無届・無許可で運営した場合に 行政処分等の矢面に立つのは運営者 で、オーナーが直ちに処分対象となるのは限定的です(旅館業の監督や許可の枠組みは厚生労働省の「旅館業法関連ページ 」等に明示)。 もっとも 違法を知りつつ容認 すれば民事上の紛争に発展し得るため、 相手先審査と契約条項での遮断 が重要です。


2. トラブルリスクとその実態

近隣住民とのトラブル

騒音やゴミ出し等の苦情は気になる点ですが、 一次窓口・是正対応は運営側の体制義務 として設計し、 連絡先掲示と対応期限(SLA)の契約化 でオーナーの実務負担を最小化できます。

物件の破損・汚損

通常損耗を超える破損・汚損は借主(=運営者)の原状回復義務 で、敷金・保証金や賠償責任保険の付保、 引渡し前後の写真・動画記録 により費用回収の実務を安定させられます。

不法滞在・犯罪利用の懸念

本人確認・宿泊者名簿管理・緊急時対応 は制度上 運営者の管理義務 であり、監督や立入の対象も運営施設が中心のため、オーナーが 直接警察対応に追われる場面は稀 です。

民泊運営で発生しうるリスクについては下記記事でより詳しく説明しております。


3. 契約条項で回避できるリスク

契約書に盛り込むべきポイント

利用目的の明記(民泊用途可)・近隣苦情の是正義務・原状回復と保険・行政処分時の即時解除 の4点をコアとし、 24時間連絡体制や定期報告 まで規定すると実務が安定します。

実際の条項例

リスク契約条項の工夫効果
騒音・苦情苦情受理→ 〇日以内の是正・報告 、再発で違約金初動の速さを 契約で担保
違法営業届出/許可の不備・取消・停止で 無催告解除オーナー責任を遮断
破損・汚損原状回復義務+賠償保険+保証金の三点セット費用回収の安定化

物件オーナーが民泊向け賃貸に貸すためのプロセスは下記記事でまとめて紹介しております。


4. 民泊オーナーが知っておくべき法律・条例(2025年1月時点)

住宅宿泊事業法

年間180日上限 や名簿・苦情対応などの 運営義務は事業者に課される ため、オーナーは制度の枠組みを理解しつつ、 相手先が順守できる体制か を契約で担保します(制度全体像は観光庁「民泊制度ポータル 」参照)。

旅館業法

旅館業(簡易宿所を含む)は 許可制 で、 監督対象は許可名義人(=運営者) です。構造設備・衛生基準等の適合も 運営側の責務 として整理されています(厚生労働省「旅館業法関連ページ 」)。

自治体条例

大阪市や京都市 などでは 区域・期間・時間帯 に関する独自ルールがあり、 物件所在地の条例準拠 が前提です(例:大阪市「住宅宿泊事業について 」、京都市「住宅宿泊事業(民泊)に関する情報 」)。

💡

ポイント

これらの法律や条例は、すべて 運営する事業者 に責任が課され、 オーナーが直接許可・届出を行う必要はありません (自主管理で運営者になる場合を除く)。

民泊事業に関する法令は下記記事でより詳しく説明しております。


5. オーナーが取れる現実的なリスク回避策

契約段階でできること

相手先の 届出/許可実績・保険付保・苦情対応SLA を審査し、 利用目的・是正義務・原状回復・行政条項 を明記、引渡し時に 状態記録(写真/動画)鍵管理 を取り決めます。

運用開始後にできること

オーナー側の実務は 年1〜2回の巡回月次レポート受領 程度で十分で、 届出取消・重大苦情 などのトリガー時のみ 解除条項 を発動できる設計にしておくと手離れが良いです。


まとめ

制度の設計上、 重い義務や行政監督の主体は運営者 であり、オーナーが直接負う法的リスクは 限定的 です。 契約で役割と費用負担を切り分け 、相手先の適法運営体制を 審査で担保 すれば、民泊向け賃貸は “大したことない”どころか手離れよく安定収益を狙える選択肢 になります。